書誌情報
論題:漁協における漁業自営の目的・意義と実態
19.09.30[ 更新19.09.30 ]
- タイトル
- 漁協における漁業自営の目的・意義と実態
- 要旨
-
本稿では漁協自営漁業の制度上の成立過程、その概況および漁業種類ごとの実態を整理し、漁協自営漁業の目的や意義を検討する。
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漁協自営漁業ができるようになったのは、1933年の漁業法の改正によってである。それは、農山漁村経済更生運動の一環として漁村経済の中核体たる漁業組合の機能強化が必要とされたからであった。その後、水産業協同組合法の成立・改正に伴い漁協自営漁業は、漁協の経済事業のひとつとしての位置づけに加えて、漁業調整、漁場の総合利用、漁利の均てんなどの役割も政府に期待されることとなった。
水産業協同組合統計表によると、2017年度に漁協自営漁業を実施している漁協は942組合中184組合(19.5%)であり、当事業が黒字は65.6%、赤字は34.4%である。当社の16年度に実施したアンケート調査によると、漁協自営漁業の目的は「組合経営の財源確保」(83.1%)が最も多く、次に「組合員の流出防止」(37.3%)、「漁業生産(量)の維持」(35.6%)であった。
現地調査を実施した20漁協の漁協自営漁業の目的を整理すると、多くの漁協が漁協経営の財源確保を目的のひとつに挙げていたが、加えて漁業種類別にみると、大型定置網では地域漁業・漁村振興、地まき式貝類養殖や潜水では資源管理や漁業調整(紛争防止)、魚貝類養殖では機会損失の回避や新漁業の開発、を目的としている。
漁協自営漁業は、有意義な目的を有しており、だからこそ漁協に漁業自営が認められているといえる。経営上の各種リスクには十分注意する必要はあるが、漁業者が減少し、漁村が衰退している地域では、漁協が漁業自営などを通じて地域漁業・経済の活性化を促していくことが期待される。 - 刊行年月日
- 2019年10月01日
- 著者/
研究者紹介 -
尾中 謙治 (オナカ ケンジ) : リサーチ&ソリューション第1部 主任研究員 研究員紹介を見る - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2019年10月号 第72巻 第10号 通巻884号 24 ~ 39ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):協同組合・組合金融・地域 (詳細区分):漁協
- 第二分野
- (大区分):農林水産業・食品・環境 (詳細区分):水産業
- キーワード
- 定置網漁業,山口県漁協,横浜市漁協,鋸南町勝山漁協,鴨川市漁協
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/7743.html