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書誌情報

論題:漁協における買取販売の実態と意義・役割

20.11.30[ 更新23.11.22 ]

タイトル
漁協における買取販売の実態と意義・役割
要旨

水産業協同組合法が改正され、漁協の役割として「漁業者の所得向上」が明文化された。そうしたなかで、漁協は漁業者の所得向上および漁協経営の安定・改善にかかる様々な取組みを実施しており、買取販売はそのひとつである。
買取販売は、漁協経営の中心である販売事業の一形態であり、販売事業取扱高に占める割合は4 %強である。2018年度に買取販売を実施しているのは198漁協(販売事業実施漁協の26.8%)であり、受託販売を補完する形で買取販売を実施する漁協の割合は増加傾向にある。
事例調査を実施した7 漁協によると、買取販売の主な販売先は消費地市場、他業者(小売業者、外食業者、加工業者など)、漁協直売所の3 つであった。消費地市場への販売の目的として多かったのは、産地買受人の価格決定へのけん制力の発揮であり、それによる魚価の向上である。他業者への販売は地元業者が中心であり、漁協は地元仲卸業者の役割を果たしている。漁協直売所での販売の主な開始理由は、漁協経営の改善もしくは魚価の維持・向上である。
今後、既存の買受人による水産物需要の創造、販路開拓、商品開発・新用途開発などによる魚価の向上を見込むことができないときは、漁協自らが買取販売によって活路を開いていくことが選択肢のひとつとなろう。また、買受人の弱体化によって、産地出荷業者や仲卸業者、小売業者、加工・冷蔵業者などの役割の一部もしくはすべてを、漁協が買取販売によって担わなければならなくなる産地が増えることも予想される。買取販売は、受託販売と比較して業務負荷が大きく、逆ザヤや在庫、品質、クレームなどの経営上のリスクを伴い、現状では人材(量と質)の不足、仲買人との調整など推進上の課題はあるものの、将来における買受人のさらなる弱体化の可能性があるなかで、漁協が未来に備えるためにも買取販売の導入・強化を検討する必要性は高まるであろう。

刊行年月日
2020年12月01日
著者/
研究者紹介
尾中   謙治 (オナカ ケンジ) : リサーチ&ソリューション第1部   主任研究員 研究員紹介を見る
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2020年12月号 第73巻 第12号 通巻898号  19 ~ 35ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2020/12/
第一分野
(大区分):協同組合・組合金融・地域  (詳細区分):漁協
第二分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):水産業
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n2012re2.pdf  927.8KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/8209.html