書誌情報
- タイトル
- 『窒素過剰問題とドイツの有機農業』 (筑波書房ブックレット 暮らしのなかの食と農シリーズ69)
- 要旨
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本書は、筑波書房ブックレット「暮らしのなかの食と農67」『環境危機と求められる地域農業構造』(2022年7月刊)の続編である。われわれはこの間に、M・ベライテス『ゲルトナーホーフ・ドイツの移住就農小規模園芸農場』(筑波書房、2023年3月刊)を翻訳出版し、ドイツの代表的有機農業運動であるデメーテル・バイオダイナミック農法に注目してきた。2022年11月には、ブランデンブルク州の2つのデメーテル農場を調査した。そのなかで、デメーテル・バイオダイナック農法が、無農薬・無化学肥料に終始する有機農業運動ではなく、温室効果ガスの削減を迫られているドイツ農業にあって、それが窒素過剰問題への取り組みの最前線に立つ有機農業運動であることに注目させられることになった。
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本書では、第1章で有機農業と物質循環を取り上げ、まさに窒素循環問題が焦点であることを見る。次いで第2章では、まずドイツにおける有機農業運動の全体像を見るとともに、デメーテル・バイオダイナミック農法の欧州でもっとも厳しいとされる有機農業基準が窒素循環を問題にしていることを紹介し、2つのデメーテル農場、すなわちマリエンヘーエ農場とゲルトナーホーフ・シュタウデンミュラーでその実際を見る。第3章では、窒素過剰対策として浮上している畜産問題についてのドイツ連邦政府の「畜産物表示義務法案」を、第4章ではAbL(農民が主体の農業のための行動連盟)の連邦政府のそうした動きに対応した「意見書」を紹介する。
もって、有機農業の持つ「地球上の生命の生存基盤である健全な物質循環を取り戻す」という本質に迫るものである。 - 目次・表紙
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はじめに 有機農業のパーパス(存在意義)を考える
第1章 有機農業と物質循環
はじめに
1.人類による窒素の大量放出と農業との連関
2.過剰な窒素が引き起こす問題の顕在化
3.「硝酸塩指令」にみるEUでの政策対応
4.有機農業という本質的な解決アプローチ
第2章 デメーテル・バイオダイナミック農法
1.ドイツの有機農業運動
2.デメーテル・バイオダイナミック農法
3.マリエンへーエ農場
4.ゲルトナーホーフ・シュタウデンミュラー
第3章 連邦政府の「畜産基準の表示義務法」案
はじめに
将来性のある畜産─畜産の国家的表示義務導入のためのキーポイント─
畜産物表示法のキーポイント
表示のデザイン
表示の実施
当局による管理
ファーストステップ:豚肉の表示
養豚の飼育方法の特徴
その他の手順
第4章 畜産の将来をめぐる議論への中小農民団体(AbL)の『意見書』
ドイツでは、ほぼ2時間毎に牛や豚を飼う農場が放棄されている─2022年に養豚経営は1,900戸、酪農経営は2,200戸が減少
1.地域農業構造にとっての農民的農業
2.食料主権のための気候正義
3.結論とAbLの要望 - 刊行年月日
- 2023年05月08日
- 著者/
研究者紹介 -
村田 武 (ムラタ タケシ) : 九州大学 名誉教授 河原林 孝由基 (カワラバヤシ タカユキ) :リサーチ&ソリューション第2部 主席研究員 研究員紹介を見る - 出版地
- 東京
- 出版者・
発行元 - 株式会社 筑波書房
- 形態(サイズ、
ページ) - A5判/80頁
- 入手条件・
価格 - 定価:本体900円(税別)
- 掲載媒体
- 『書籍』
2023年05月08日号 - 第一分野
- (大区分):農林水産業・食品・環境
(詳細区分):海外農業 - ISBN
- 978-4-8119-0650-8
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/publication/books/9306.html