農林中金総合研究所

欧州連合（EU）では数年来、環境戦略と農業の間で摩擦と調整が続いている。欧州議会の欧州人民党は農業部門の不満に同調して各種立法案を大きく後退させた。欧州委員会は産業と農業に配慮して方向転換を図り、農業・環境の両部門を交えた「戦略的対話」を実施した。
農業に対する環境規制の強化は規模を縮小しつつも大きな前進を果たした。また、順守費用の高い規制をインセンティブによる誘導に変更する動き、農業環境施策と環境政策の連携強化、農業環境データの集積・蓄積が見込まれる。
2024年初頭の農業者デモを受けて、環境要件の緩和、農産物販売の契約強化、生産者組織への梃入れ、不公正取引慣行の規制強化が打ち出された。
戦略的対話の勧告は、持続可能性ベンチマークなどの新施策や、農業GHG削減目標の設定、植物性たん白質の消費促進を含む。また棚上げされていたファームトゥフォーク戦略の各種施策について今後の方向性を示しており、実質的な再始動につながる可能性もある。
地域：EU（欧州、ヨーロッパ）