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論題:拡大するブラジルの農業投資―中国の輸入増がもたらす世界食糧供給構造の変化―

12.07.31[ 更新12.07.31 ]

タイトル
拡大するブラジルの農業投資―中国の輸入増がもたらす世界食糧供給構造の変化―
要旨

1 21世紀に入って,世界農業において少なくとも二つの大きな変化が生じた。一つは食糧価格が2007年から新たなステージに上ったことである。その主な要因の一つは中国の大豆輸入の急拡大である。二つ目の変化は,世界的に農業関連投資が活発化し,その結果,直近の5年間,世界の食糧生産量も貿易量も拡大が過去最大となった。いわば世界は新たな農業拡張期を迎えた。
2 農業投資が最も盛んな地域は,未開の大地を意味するブラジルの「セラード」エリアであり,世界で残された最大の未開拓地である。ブラジルでの旺盛な農業投資状況をよく示すのは,農地価格の上昇である。11年の農地価格は,食糧価格上昇前の05年に比べて約2倍に上昇した。米国の農地価格と比較すると,06年ではまだ米国の約半分しかなかったが,10年に米国の63.2%になり,上昇の激しいことが分かる。
3 ブラジル農地価格の上昇は直接的には旺盛な農地購入需要に起因するが,背景には世界食糧価格の上昇,輸出作物である大豆作付面積の拡大,外国直接投資の増加がある。特に,今後,中国でトウモロコシなどの食糧輸入量がさらに増加する可能性があることは,農業投資の拡大に拍車をかけている。
4 今回の農業拡張期に,既存の穀物メジャーや化学肥料,種子,農業機械など世界トップレベルの企業や中堅企業は当然投資を増やしているが,そのほかに新規参入者も少なくない。そのなかで突出しかつ堅調に動いているのは日系商社である。
5 日系商社は,ブラジルにおいて各種提携や出資,買収を通して,ブラジルの農産物と流通システムを手に入れ,一方,同時に中国において同様の手段で中国の需要を手に入れる。つまり,かつて穀物メジャーが中国とブラジルの大豆貿易のルートを切り開き,かつ拡大したモデルと同じようなビジネス展開を行っている。こうした日系商社の展開もあり,大豆に次いでトウモロコシもブラジルから中国への輸出が増えることになろう。

刊行年月日
2012年08月01日
著者/
研究者紹介
阮   蔚(Ruan Wei) (ルアン ウエイ) : 役員・理事長・顧問・理事研究員 等 リサーチ&ソリューション第1部   理事研究員 研究員紹介を見る
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2012年08月号 第65巻 第8号 通巻798号  2 ~ 18ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2012/08/
第一分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):海外農業
キーワード
穀物価格,農業投資,中国の大豆,日系商社,セラード,穀物メジャー
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n1208re1.pdf  1.0MB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/4413.html