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書誌情報

論題:農協系統における協同会社の設立と役割-事業機能の拡充と利便性の向上をめざして-

01.05.01[ 更新10.09.02 ]

タイトル
農協系統における協同会社の設立と役割-事業機能の拡充と利便性の向上をめざして-
要旨

農協による協同会社の設立は,協同組合の基本に係わる課題を内在し,協同会社の是非をめぐる論議を経て現在に至っている。外部出資としての株式取得は,農協法制定時において総会の議決事項とされ,組合にとって重い判断とされた。
  昭和23年には組合出資が過半を占める本格的な株式会社が発足した。農村工業の整備促進に伴い株式会社として発足した工場もあったが,組合出資による株式会社は例外的なものであった。初期の段階では,経済事業のウエイトの高い専門農協(連合会)による協同会社の設立が先行し,特に酪農協(連合会)や青果連で設立事例がみられる。全国連による協同会社設立は,貿易専門会社の設立が端緒となった。農協系統における協同会社設立の契機となったのは,全購連による配合飼料工場の株式会社移行で,昭和40年代以降協同会社の設立が進展する。これに伴い「農協がなぜ株式会社を設立するのか」「利益追求に走り協同組合の本質を失うのではないか」といった論議も提起された。
協同会社の設立は昭和46年~50年,平成元年~10年の2つの時期にピークがあり,前者は経済連等連合会が,後者は農協が主体である。系統の農畜産物供給体制の拡充や生活基本構想の推進に呼応して,特に経済事業関連の協同会社が多く設立された。平成10年3月末時点で,全国の農協,各県連合会,全国連合わせて1,075社に達し,業種的にも多岐にわたっている。
農協を母体とする協同会社の設立は,広域合併の進展とともに,特に平成以降に本格化する。設立目的,背景として「親組合では事業展開が困難」「組合員の事業ニーズが増大」「土日出勤等特殊な勤務体系に対応」「企業的・専門的経営による収益力強化」「親組合の事業効率化・再構築の一環」等があげられ,事例調査においても確認された。農協の協同会社は,役員や会社の運営,経営管理等において親組合の関与が強いのが特徴である。業務内容も親組合の運営受託的業務が主体である。今後農業振興や地域における役割が高まるなかで経営体としての採算性確保,事業規模の限界,不採算事業への対応等どう克服していくかが課題となる。
農協系統全体として組織再編の動きが加速しており,協同会社の見直しも始まっている。全国連・県連の協同会社は再編の過程に入っており,特に経済事業では思い切った再編・整理が検討されている。一方,農協段階では協同会社の設立がさらに増加するとみられる。協同組合出資の会社として,組合員・利用者がより利用しやすい事業への変革や地域に開かれた運営が求められるとともに,経営体として損益責任を明確化し,事業・経営を維持する努力が一層必要となる。また職員の就業意欲や専門能力を発揮しうる環境づくりに努めるとともに親組合の事業・組織の一翼を担う部門として機能発揮が期待される。

刊行年月日
2001年05月01日
著者/
研究者紹介
鴻巣   正 (コウノス タダシ) : リサーチ&ソリューション第2部   専任研究員
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2001年05月号 第54巻 第5号 通巻663号  2 ~ 17ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2001/05/
第一分野
(大区分):協同組合・組合金融・地域  (詳細区分):農協
キーワード
JA事業改革,協同会社,JA出資法人,JA子会社,経済事業改革
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0105re1.pdf  136.2KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1357.html