書誌情報
論題:2003年度組合金融の展望-金融システムの不安定性と農協貯貸金-
03.01.01[ 更新10.12.06 ]
- タイトル
- 2003年度組合金融の展望-金融システムの不安定性と農協貯貸金-
- 要旨
-
金融機関全体を取り巻く一般経済の情勢は来年度も厳しい。雇用情勢の悪化,所得の減少,社会保障費の負担増,民間住宅投資の減少等,金融機関の預貯金,貸出金の動向には逆風が続くとみられる。このような状況下で,農協の資金動向は金融システムの不安定性の影響を大きく受けることが予想される。
VIEW MORE CLOSE
個人金融資産の残高は,雇用情勢の悪化,所得の減少,家計の社会保障費等の負担増等により,減少が続くとみられる。そのなかで,①個人の元本保証の商品への選好は引き続き強いこと,②株価の上昇が期待できないこと,③ペイオフの全面的な解除が2005年4月まで延期されたこと等により,預貯金は増加が続くとみられる。しかし,金融資産全体が減少することから,預貯金の伸び率は横ばいないしは低下するとみられる。加えて,2003年度は個人向け国債やミニ公募債の発行額が増加し,安全性志向の強い個人にとっても選択肢が増加する。
農協の基盤である農家経済は,農業経営をめぐる環境の悪化や,景気の低迷による農外所得の減少,土地価格の下落等,厳しい状況が続いており,それが農協貯金の財源にも反映されている。一方で,ペイオフの一部凍結解除を控え他業態から流入した資金は,農協貯金の伸び率を押し上げたとみられるが,ペイオフの全面的な凍結解除の延期によってそうした影響は薄れていくとみられる。ただし,金融システムの不安定性は個人預金者の行動に影響を与えており,競合する他業態の動向次第では農協貯金への資金流入が発生する可能性も想定される。
民間金融機関では,企業向けの貸出が大きく落ち込んでいることから,住宅ローンを積極的に推進することによって,個人貸出の伸長をはかろうとしている。住宅資金については,住宅着工戸数の減少により市場の縮小が見込まれるが,民間金融機関は住宅金融公庫のシェア低下分の獲得によって残高増加をはかっており,金利など商品面の競合は一層激化しよう。
農協の貸出金の用途のうち,増加しているのは自己居住用住宅資金と賃貸住宅資金である。農協の自己居住用住宅資金の伸び率は他業態と比較すると低いが,今後各農協の積極的な取組みにより伸び率が上昇する可能性もあり,その動向が貸出金残高全体に与える影響は大きいとみられる。 - 刊行年月日
- 2003年01月01日
- 著者/
研究者紹介 -
重頭 ユカリ (シゲトウ ユカリ) :調査第一部 副主任研究員 研究員紹介を見る - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2003年01月号 第56巻 第1号 通巻683号 20 ~ 27ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):協同組合・組合金融・地域 (詳細区分):農協信用事業
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1504.html