書誌情報
論題:デフレ脱却観測の高まりと金融政策運営
04.08.01[ 更新10.09.02 ]
- タイトル
- デフレ脱却観測の高まりと金融政策運営
- 要旨
-
1 持続的な景気回復を受けて,1990年代後半以降続いてきた物価指標の下落率が大幅に縮小してきた。金融市場では,日銀が量的緩和政策継続の前提としてコミットメントしている消費者物価に注目が集まっており,長期金利のボラタイルな動きの原因ともなっているが,原油価格やコメ価格などの特殊要因を除いて,近い将来前年比プラス圏内で安定的に推移するとの予想を持つには至っていない。
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2 現行の量的緩和政策は01年3月に導入されたが,徐々に量的目標である日銀当座預金残高は引き上げられ,04年7月時点で「30~35兆円」と膨大な金額になっている。ただし,このような大量の資金がインターバンク市場に滞留しているのはデフレかつ超低金利状態であるためであり,この資金をマクロ経済全体に行き渡らせる施策が実施される必要がある。
3 中央銀行は特定の資産市場との関与を避ける傾向にあるが,日銀は信用秩序維持政策の一環として関与を深めてきた。特に,国債大量発行が当面続くなかで,仮にデフレ脱却が実現された後でも主要プレーヤーである日銀が果たすべき役割は小さくない。
4 03年度中に見られた外国為替市場での大規模介入は,金融市場では非不胎化介入ではないかと受け止められた可能性が高いが,実際に日銀当座預金残高が引き上げられた背景は,介入資金調達のためのFB発行と償還で生じる時間差に対応したものであった可能性が高く,最終的には非不胎化介入ではなかったものと考えられる。
5 日銀の金融政策には,物価安定を通じた景気対策としての側面と金融システム安定化のための信用秩序維持政策の両面がある。また,消費者物価指数の上方バイアスの存在に配慮すると,量的緩和政策の転換(いわゆる出口政策)の実施時期は依然として展望できない。ただし,日銀は「市場との対話」を再構築し,自身の意図が正確に伝わるよう努力するなど,事前の環境整備を着実に進めるべきである。 - 刊行年月日
- 2004年08月01日
- 著者/
研究者紹介 -
南 武志 (ミナミ タケシ) :調査第二部 主任研究員 研究員紹介を見る - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2004年08月号 第57巻 第8号 通巻702号 2 ~ 13ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):経済・金融 (詳細区分):国内金融
- 第二分野
- (大区分):経済・金融 (詳細区分):国内経済
- キーワード
- デフレ,日銀,量的緩和政策,金融政策,非不胎化介入
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/1660.html