書誌情報
論題:中国・インドの穀物需給動向-中印の輸出入動向に揺さぶられる国際穀物市場-
10.03.01[ 更新10.12.03 ]
- タイトル
- 中国・インドの穀物需給動向-中印の輸出入動向に揺さぶられる国際穀物市場-
- 要旨
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1 中国とインドは政治体制や宗教事情など異なる点が少なくないが,ともに人口大国であり,高成長を続けている点でも共通性がある。農業分野においても,ともに70年代末から80年代初頭にかけ,穀物の自給を達成し,その後,90年代半ばに穀物輸出国に転じた点もほぼ同じといってよい。両国とも最大の輸入穀物は小麦,輸出穀物はコメである。
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2 中印が穀物輸出国に転換できた最大の要因は言うまでもなく穀物の飛躍的な増産にあるが,これをもたらしたのは専ら単収の増加である。単収の増加は,品種改良と生産技術の革新を意味する「緑の革命」によって達成された。灌漑設備の整備と化学肥料の増加により高収量品種の作付けを拡大できたためである。
3 一方,国内で食管制度により予想外の需給ギャップが発生したことも輸出の背景にある。両国とも政府が定める価格で穀物を買い上げ,販売する食管制度があるが,政府は農民からの買上価格引上げに対応して穀物の販売価格を値上げしたため多くの低所得者層は経済的理由で穀物消費を減らし,需要が落ちた面がある。結果的に政府は穀物の在庫を抱えることとなり,その処分のために輸出を促進した。
4 政府の国内低所得者層向け穀物安定供給策は別の局面では輸出規制となって現れた。中印は07年からの世界穀物価格高騰期に国内価格の高騰を警戒し,いち早く輸出規制策の実施に踏み切った。もともと世界の穀物貿易規模に対して中印の需要はあまりに大きいため,両国の対応は国際穀物市場の混乱を深めることとなった。中印は「穀物価格の引上げを求める小農」と「安価な穀物を必要とする貧困・低所得者」という対立に影響されるため政策運営のレンジが狭く,安定的な穀物輸出国にはなれないのである。特に主食としての穀物の貿易は今後も過不足の調整にとどまらざるを得ない。
5 今後,両国に求められるのは着実な増産,在庫対策などによって国内需給を安定させ,突然の大量輸出入などで国際穀物市場に大きなインパクトを与えない努力であろう。日本含め先進各国は中印に新たな対応を求めるとともに,技術,資本,教育など多様な面から支援,関与していくことも重要である。中印の穀物需給の安定こそ世界の穀物貿易の健全な発展の基礎となるとみるべきである。 - 刊行年月日
- 2010年03月01日
- 著者/
研究者紹介 -
阮 蔚(Ruan Wei) (ルアン ウエイ) : 役員・理事長・顧問・理事研究員 等 リサーチ&ソリューション第1部 理事研究員 研究員紹介を見る - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2010年03月号 第63巻 第3号 通巻769号 22 ~ 38ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):農林水産業・食品・環境 (詳細区分):海外農業
- キーワード
- インド,穀物貿易,緑の革命,食管制度,中国,中印
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2173.html