書誌情報
論題:ヨーロッパのソーシャル・ファイナンス
10.10.19[ 更新10.10.19 ]
- タイトル
- ヨーロッパのソーシャル・ファイナンス
- 要旨
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ソーシャル・ファイナンス(連帯ファイナンス)は,一般に「金融面での利益と同様に,社会的な利益や社会的配当を求める組織による資金供給」と考えられている。ヨーロッパでは,多くの国にソーシャル・ファイナンス機関が存在し,金融市場に占めるシェアは極めて小さいものの,その規模は年々拡大しているとみられる。
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このレポートでは,ソーシャル・ファイナンスが登場するようになった背景や,具体的な事例として,イタリアの倫理銀行,オランダを初めとして5カ国で操業するトリオドス銀行,フランスのLa NEFについて紹介している。これらの機関には,①預金者が預金金利の一部を寄付する仕組みがある,②融資先が,社会的,環境的,文化的なプロジェクトに限定されている,③融資先の活動のポジティブなインパクトにも注目して審査を行う,④融資先の情報を公開する等透明性を重視している,⑤融資先や寄付を受けている組織のネットワークを通じて利用者を増やしているという共通点がある。
こうした機関の数が多く,ネットワーク組織が形成されているフランスについては特に詳しく概況を説明している。近年フランスでは,失業者等困難な立場にある人を社会的に統合するための「マイクロクレジット」が活発化しているが,Adieというマイクロクレジット機関を例に,融資,サポート,保証,資金調達を具体的に紹介している。
最終章では,ソーシャル・ファイナンスの課題として,経済的な利益と社会的な利益の間でのバランスをとることの難しさを挙げている。ヨーロッパの取組みからは,地域でそれぞれ活発に活動している主体が有機的に結びつき,そこに政策的な支援がなされるようになると,ソーシャル・ファイナンス機関の成長が大いに促進されると考えられる。
- 刊行年月日
- 2010年09月30日
- 著者/
研究者紹介 -
重頭 ユカリ (シゲトウ ユカリ) :調査第一部 主任研究員 研究員紹介を見る - 第一分野
- (大区分):協同組合・組合金融・地域 (詳細区分):海外協同組織金融機関
- 第二分野
- (大区分):経済・金融 (詳細区分):海外金融
- 掲載媒体
- 『総研レポート』
2010年09月 - 出版者・編者
- 株式会社農林中金総合研究所
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/publication/soken/contents/3657.html