農林中金総合研究所

2017年の通常国会で，農業の競争力強化を目的とした8 つの法律（農業競争力強化関連法）が可決・成立した。これによって，今後も一層，農業の生産性を高めながら持続的に発展できる農業経営の育成に重点を置いた政策が進められると考えられる。
一方，これらの法律には「食料・農業・農村基本法」（新基本法）以降の農業政策で志向されてきた農業の多面的機能や多様な担い手，農村振興を重視する方向性がみられない。
近年の農業政策は産業政策的な傾向を強め，産業としての農業の発展を妨げる規制の撤廃をかかげて法改正や新法制定が進められており，農業競争力強化関連法もこの流れに位置づけることができる。これらの法律の成立後には「農林水産業・地域の活力創造プラン」の3次改訂も行われており，「規制」改革に偏った動きがさらに進むと見込まれる。しかし，産業政策的な農業政策のみに傾斜することは，農業経営の育成に必ずしも有効とはいえず，また，食料安全保障の観点からも問題があるため，新基本法の精神に立ち返った政策への転換が必要である。