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書誌情報

論題:欧州の協同組合銀行グループの事業戦略-中央機関による買収と単協での組合員増強-

08.10.01[ 更新10.09.06 ]

タイトル
欧州の協同組合銀行グループの事業戦略-中央機関による買収と単協での組合員増強-
要旨

欧州において協同組合銀行は平均すると各国で約20%のシェアを有しており,IMFが2007年に刊行したレポートでも金融市場における重要性が指摘されている。
 協同組合銀行グループは,事業面では,単協,全国銀行の二段階制,あるいは地方銀行も含めた三段階制をとる。歴史的経緯や金融行政のあり方によって,グループとしての一体性の強さには違いがあるが,近年ではグループ全体で事業戦略を決定したり,グループ格付けを取得する傾向が強まっている。
 フィンランドのOPポヒョラ・グループでは,グループの総合金融戦略を強化するため,2005年に全国銀行が国内最大の損害保険会社であるポヒョラ保険を買収した。現在は,銀行部門の利用者に対する保険商品のクロスセルを伸張するため,単協における保険販売体制の強化に努めている。また,新たな収益機会を求めて,グループの全国銀行が国外のリテール業務に進出するという動きも目立ち始めている。オーストリアのライフアイゼンバンク・グループの全国銀行RZBは,持株会社を通じて,中東欧諸国15か国の16銀行を傘下におさめている。
 こうした買収のための資金調達は,株式市場を通じて行われた。これらのグループでは,全国銀行あるいはその子会社の株式の過半数をグループ内で保有しつつ,一部を株式市場に上場している。市場への上場によって,グループ内に協同組合形式の単協と上場株式会社という2つのタイプの組織を含む「ハイブリッド銀行グループ」化が生じており,市場の価値観と協同組合の価値観が対立することが懸念されている。
 こうした現況は,協同組合銀行が市場に包摂されつつあるようにみえなくもない。しかし,グループ内に協同組合形式と株式会社形式の事業体が混在し,グループ構造の複雑さが増大するという状況を,株式会社への転換や,協同組合らしさを薄めることによって解消しようという傾向はみられないように思われる。むしろ,協同組合らしさを追求することが商業銀行との差異化につながると考え,組合員数を増やし,さらに組合員と単協との関係性を強化しようという動きが進んでいる。業容がどれほど拡大し,連合会レベルでは多様な手法がとられるようになったとしても,単協の基盤は組合員であることは変わらず,地域とのつながりといった協同組合らしさがグループとしてのアイデンティティに根付いているということが改めて認識される。

刊行年月日
2008年10月01日
著者/
研究者紹介
重頭   ユカリ (シゲトウ ユカリ) : リサーチ&ソリューション第1部   理事研究員 研究員紹介を見る
掲載媒体
定期刊行物 『農林金融』
2008年10月号 第61巻 第10号 通巻752号  29 ~ 42ページ
掲載コーナー
論調
掲載号目次
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2008/10/
第一分野
(大区分):協同組合・組合金融・地域  (詳細区分):海外協同組織金融機関
キーワード
RZB,ラボバンク,OPバンク,クレディ・アグリコル
出版者・編者
農林中央金庫 発行   / 株式会社農林中金総合研究所 編集
ISSN
1342-5749
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0810re3.pdf  97.1KB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2050.html