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書誌情報

論題:北都留森林組合の取組み〜超一流の林業プロ集団を目指す〜北都留森林組合 中田無双参事講演録

20.08.13[ 更新20.08.13 ]

タイトル
北都留森林組合の取組み〜超一流の林業プロ集団を目指す〜北都留森林組合 中田無双参事講演録
要旨

森林は日本の国土面積の3分の2を占め、水源涵養、国土保全、地球温暖化防止、生物多様性保全、保健・レクリエーション、防災・減災といった多面的機能(公益的機能)を有し、様々な恩恵を我々にもたらしている。それら公益的機能から”森”と聞くと、都市住民の多くは豊かな”自然”のイメージを抱くのではないだろうか。

実は日本の森林の4割は人工林である。人が作った森林は継続的に人が手を入れてこそ健全に保たれる。往時は木材生産活動が継続して行われることで森林に間伐など人の手が入り、結果、公益的機能がおのずと発揮されるといった予定調和があった。しかし、現在は長期にわたる木材価格の低迷と後継者不足等により、その前提となる木材生産活動が停滞し手入れが進まず、森林のもつ公益的機能が損なわれようとしている。

普段、我々が何気なく見ている自然の風景は決して自然のまま放置(放棄)した状態ではなく、人の手が入っていることを忘れてはならない。それは長い歴史のなかで繰り返されてきた営みであり、自然に対峙し土地に根ざして人々の暮らしを支えてきた。それが今、危機にあえいでいる。

農林中金総合研究所では2018年に「森海川の協同組合連携勉強会」を立ち上げ、森川海といった自然環境のつながりのなかで地域と懸命に向き合いながら生きる人々をお招きし、そこから生み出される言葉に真摯に向き合うことを始めた。一連の講演会の内容は『農林金融』(20年3月号―農林中金総合研究所設立30周年記念号―)に「〈講演録〉森海川に生きる人々のことば」として編纂しているのでご覧いただきたいが、今回はその中で中田無双氏〈北都留森林組合参事〉に講演いただいた内容(18年11月27日)の全文を収録したものである。

本講演録は『農林金融』では紹介しきれなかった林業の未来を担う人材育成の取組みについて紙幅を割いている。元気な森には元気な山村が必要であり、元気な山村には元気な林業が必要であり、その林業を元気にするためにも人が元気になることが必要だ。それに向けた数多くの苦闘の歴史とアイデアが詰まっている。また、その実現には「流域連携」というかたちで流域全体が一丸となることの重要性の示唆も貴重である。

近時、「働き方改革」の機運が高まる中で「健康経営」という言葉が注目されるが、ここでいう「健康」(Well-being)とは単に「病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」(WHO憲章・前文)をいう。現場の安全第一や経済面での所得確保は言うまでもないが、精神的にも、また社会的にも文化的にも、そこで働く人たちが自己実現に向けて高いモチベーションで仕事に取り組めるようサポートしていく。本稿は、そのことを先取りして取り組まれてきた努力の軌跡でもある。
「ドイツの子供たちの間では、プロのサッカー選手になるか、フォレスターという林業家になるかというくらい、子供たちの憧れの職業になっている」という。日本でもそうなることを夢で終わらせてはいけない。
(解題:河原林孝由基、講演録文責:田口さつき)

刊行年月日
2020年07月25日
著者/
研究者紹介
田口   さつき (タグチ サツキ) : リサーチ&ソリューション第2部   主任研究員 研究員紹介を見る
河原林   孝由基 (カワラバヤシ タカユキ) : リサーチ&ソリューション第2部   主席研究員 研究員紹介を見る
中田   無双 (ナカタ ムソウ) :北都留森林組合   参事
第一分野
(大区分):協同組合・組合金融・地域  (詳細区分):森林組合
第二分野
(大区分):農林水産業・食品・環境  (詳細区分):林業
掲載媒体
『総研レポート』
2020年07月
キーワード
北都留森林組合,流域連携,森林環境譲与税,森林教育,循環型社会,経営理念
PDF URL
https://www.nochuri.co.jp/skrepo/pdf/sr20200813.pdf  5.6MB
書誌情報URL
https://www.nochuri.co.jp/publication/soken/contents/8086.html