書誌情報
論題:米政策改革の動向-米価下落等影響緩和対策を中心に-
08.07.01[ 更新10.09.06 ]
- タイトル
- 米政策改革の動向-米価下落等影響緩和対策を中心に-
- 要旨
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本稿の目的は,米政策改革下における米の価格と収入に関する領域の施策,特に米価下落時の施策について,その展開と仕組みをフォローすることにある。
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まず、現行の生産調整システムを米の価格,収入にかかる政策という視点で整理すると,①参加メリットを前提とした生産者・生産者団体主体の供給量の調整,②集荷円滑化対策による過剰米の隔離という量的な調整によって価格の維持を図り,それでも価格が下落した場合には,③生産調整参加者に対して財政支出による補てんが行われるポリシーミックスであるといえる。
09年秋の米緊急対策をうけて、政府は34万トンの緊急買入れを実施した。しかし、生産調整・米価下落の補てん措置を採用するなかでの政府買入は,政策手段の組み合わせとして整合性を欠いた面をもつ。その結果として,政策の推進において,行政,農協職員をはじめとする現場担当者の負担を増幅させてしまうことにも留意する必要がある。
ポリシーミックスのひとつである財政支出による米価下落等影響緩和対策は,旧食糧法下の稲作経営安定対策を端緒とする。米政策改革の第一ステージでは,生産調整参加者全員を対象とするメリット措置としての稲作所得基盤確保対策と対象者を限定した担い手経営安定対策が講じられた。また,19年度より,担い手を対象とした対策は担い手経営安定対策から経営所得安定対策の収入減少緩和対策に移行した。
このような、米価下落等影響緩和対策の施策の流れは,「価格補てんによる生産調整のメリット措置の導入→担い手の支援策の導入→担い手に対する支援への重点のシフト」という進展としてとらえることができる。一方で,生産調整参加者全体にいきわたる補てん措置は相対的に低下している。しかしながら、生産調整政策には多数の多様な農業者が関わっており,生産調整の実効性を確保するには担い手以外の農業者の協力が不可欠である。
今後の課題として、彼らにも生産調整への参加が経済的に有利となるようなメリット措置を確保する必要がある。また、収入減少緩和対策による補てんが稲作経営にもたらす効果を検証することも必要であろう。また,収入減少緩和対策は価格が構造的に低下している場合には経営安定対策としての効果が薄れてしまう。傾向的な価格低下に対する措置についても検討すべきと考える。
- 刊行年月日
- 2008年07月01日
- 著者/
研究者紹介 -
小針 美和 (コバリ ミワ) :調査第一部 研究員 研究員紹介を見る - 掲載媒体
- 定期刊行物 『農林金融』
2008年07月号 第61巻 第7号 通巻749号 2 ~ 13ページ - 掲載コーナー
- 論調
- 第一分野
- (大区分):農林水産業・食品・環境 (詳細区分):国内農業
- 第二分野
- (大区分):協同組合・組合金融・地域 (詳細区分):農協
- キーワード
- コメ政策,米政策改革,水田経営所得安定対策,政府買入,収入減少補てん,ナラシ
- 出版者・編者
- 農林中央金庫 発行 / 株式会社農林中金総合研究所 編集
- ISSN
- 1342-5749
- 書誌情報URL
- https://www.nochuri.co.jp/periodical/norin/contents/2026.html