農林中金総合研究所

近年、激甚化かつ広範化する自然災害は地域農業にも甚大な被害をもたらしている。その復興には、ボランティア活動による支援を必要とする場面も多い。しかし、災害支援の領域で主流となっている社会福祉協議会が開設する災害ボランティアセンターでは、一般的に農業分野での復旧活動にはボランティアをコーディネートできない場合が多い。その代わりに、NPO法人や農協といった民間団体が農業分野専門の災害ボランティアセンターを開設する事例が増えてきている。
本稿では、自然災害によって被災した地域農業の回復力を支える取組みの１つとして、農業災害ボランティアセンターに注目し、そこにボランティアコーディネート、地域農業への理解に基づく運営判断、外部組織との調整といった役割・機能があることを事例調査から明らかにした。また、農協のように地域農業に立脚した事業を展開する組織がこの分野に関与する意義を示したうえで、いざというときに農協が災害復興支援を行うための、平時からの備え方についても言及した。