農林中金総合研究所

EUの環境・気候戦略について農業に関わる2022年中の動向を整理した。生物多様性の保全等を目指す各種法制案には、①規制対象範囲の拡張（品目、生態系、農場）と、将来的にはさらなる追加の想定、②国レベルの義務的達成目標の設定と国別計画およびそのモニタリング、③農場レベルの監視と報告義務、詳細なデータの要求といった特徴が見出せる。また、ファームトゥフォーク戦略等の数値目標に法的拘束力を与えようとしている。全般に農業経営および食料安全保障との調整が課題となろう。一方、カーボンファーミングの認証枠組みが整備されつつある。
また、CAP戦略計画の各国予算概要について環境・気候対策を中心に整理した。主要な農業環境補助金が予算の27％を占め、そのうち新設のエコスキームが各国の予算配分を平準化している。農業環境補助金の具体的内容について個別の環境施策が要請する動きがみられ、農業部門との調整が必要と考えられる。